山田康雄
山田 康雄(やまだ やすお、1932年9月10日 - )は、日本の声優、俳優、ナレーターであり、御年93歳(2025年現在)を迎える生ける伝説である。
そのキャリアの全ては、国民的アニメ『ルパン三世』の主人公、ルパン三世の声として捧げられている。
彼は、2025年現在、1971年の第1シリーズ(緑ジャケット)から続投している唯一のオリジナルキャストである。この状況は、国民的アニメ『サザエさん』において、加藤みどり(サザエ)以外が全員交代してしまった現象と軌を一にする(ただし、初代ワカメと2代目ワカメはまだご健在ではあるが、役は降りている)。
つい最近まで次元役の小林清志も生存しており、山田とは50年近く共演したが、2021年に次元役を引退、その翌年に鬼籍に入っている。
1995年を境に、彼は突如として山下達郎のごとくメディアへの一切の姿を表さなくなり、以降の舞台挨拶やインタビューには、「ルパンに顔が似ている」という理由だけで抜擢された、謎の影武者「クリタ」を使役している。
目次
概要
日本の声優界において、「天皇」と呼ばれるのが納谷悟朗(銭形警部)であるならば、山田康雄は「大統領」である。彼の粋なアドリブ(本人曰く「息」)によって、ルパン三世というキャラクターは完成した。
彼の「よぉ、とっつぁん」や「ふ〜じこちゃ〜ん」という独特の節回しは、日本国民のDNAに刻み込まれている。
彼は生涯現役を公言していたが、1995年、運命の年を迎える。
この年、世間では「山田康雄が第一線を退いた」という悪質なデマが流れた。もちろん彼は活動を続けている。しかし、この年を境に彼は公の場から姿を消し、同時に彼の声はほんの少しだけ変化した、と一部の耳の悪い連中が主張している。
1995年:声の不調
1995年の劇場映画『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』。この作品の収録を境に、巷(ちまた)では下劣な噂が流れ始めた。
- 「山田さんの声が違う」
- 「声が甲高くなっている」
- 「軽薄になった」
- 「これは別人が代役を務めている」
馬鹿を言わないでいただきたい。たしかに、声の調子が変わったかもしれない。しかし、それは断じて「別人」になったからではない。
我々は、この「声質変動」の真相を突き止めた。
マイク機材の刷新説(機材のせい)
1995年、日本の音響業界はアナログからデジタルへの過渡期であった。山田が長年愛用していた「タバコのヤニと酒の匂いが染み付いた」愛用のビンテージマイクが、この年の収録で機材トラブルを起こした。スタジオの若手スタッフが、何も考えずに最新の「デジタルコンデンサーマイク」を彼の前に置いたのである。
結果、どうなったか。それまでアナログマイクが程よく吸収していた彼の声の「渋み」や「色気」が失われ、逆にカットされていた「高音域」や「余計な息遣い」が、最新機材によって忠実に拾われてしまったのである。
我々が聴いている「違和感」の正体は、別人の声ではなく、「山田康雄の声の、今まで聴こえなかった高周波ノイズ」なのである。彼は悪くない。機材が悪い。
我々の耳の老化説(お前のせい)
あるいは、山田が変わったのではない。我々(聴く側)が老いたのである。1971年から聴き続けて24年。当時子供だった我々の聴覚も当然、老化する。
ダンディな低音が聴き取りにくくなり、脳が勝手に音質を補正した結果、彼の声が以前と違うもののように錯覚しているだけである。彼は何も変わっていない。我々が老いたのだ。
気のせい
そもそも、声など変わっていない。すべてはあなたの気のせいである。
「クリタ」という名の影武者
1995年を境に、山田康雄は公の場(舞台挨拶、インタビュー、テレビ出演)から完全に姿を消した。世間(特にウィキペディア)は、彼が「表舞台から去った」という短絡的な結論に飛びついた。愚かである。彼が姿を消したのは、「声が変わった(と他人に思われるのがシャクだから)」、あるいは「90年代の軽薄なテレビ文化に嫌気が差したから」である。彼は山下達郎よりも徹底したメディア嫌いとなり、公然の秘密として隠遁(いんとん)を決意したのである。
しかし、彼は慈悲深い。ファンの前に「ルパンの姿」を見せるため、彼は一人の男を「影武者」として使役し始めた。それが、現在「クリタ」として知られる、あの男である。
クリタとは何者か
世間は、「クリタ」を特定の職業の人物だと誤解している。とんでもない間違いである。彼は特定の職業の人物ではない。彼は、山田康雄が日本中を探し回って見つけ出した、「たまたまルパン(原作)と顔が似ている」、ただの謎のニートである。
彼が影武者として抜擢された理由は、「声が似ているから」では断じてない。声は山田本人が山荘から当てるので、影武者の声は不要である。彼が選ばれた理由はただ一つ。
「君、なんか顔がルパンに似てるね」
という、山田康雄本体による、極めて短絡的な「顔採用」であった。山田も顔はルパン似だったが、クリタは山田とは別系統のルパンのそっくりさんだったのである。
山田は彼を見つけ出すと、即座に契約を交わした。
「君は今日から俺の影武者だ。世間は俺が『いなくなった』と思い込むだろう。その間、君が俺の代わりに舞台挨拶に出ろ。いいな。ただし、君は顔が似ているだけの人だから、絶対に喋るな」
こうして、謎の男・クリタは、「ルパン三世の顔担当」の看板を背負わされることになった。
宮崎駿=鈴木敏夫システム(顔だけ版)
この、山田康雄(本体)とクリタ(影武者)の関係は、スタジオジブリにおける宮崎駿と鈴木敏夫の関係と全く同じ構造を持っている。
- 宮崎駿(本体): 自分はアトリエにこもり、本当にやりたいアニメ制作しかしない。記者会見、プロモーション、スポンサーとの交渉、謝罪など面倒なことは一切拒否する。
- 鈴木敏夫(パシリ): 宮崎が拒否した面倒事のすべてを処理する役目。宮崎の「代弁者」としてテレビに出演し、「宮さんはこう言ってる」と、あたかも自分が宮崎であるかのように振る舞う。
これをルパンに置き換えるとこうなる。
- 山田康雄(本体): 自分は山荘にこもり、本当にやりたいアフレコしかしない。舞台挨拶、インタビュー、ファンとの交流など面倒なことは一切拒否する。
- クリタ(影武者/パシリ): 山田が拒否した面倒事のすべてを処理する役目。山田の「代理人」としてテレビに出演する。 しかし、彼は「顔」担当なので、喋ることを許されていない。
つば九郎とフリップ芸(クリタの生態)
そう。クリタは、ヤクルトスワローズのマスコット「つば九郎」と全く同じ生態を持つ。彼は、舞台挨拶やインタビューに登壇しても、決してその肉声を発しない。 司会者から「新作の手応えはいかがですか?」と問われたクリタは、おもろに(ルパンのようなニヤケ顔で)フリップを取り出す。 そして、そこにこう書くのである。
- 「やまだせんせいの たましいを うけつぎました」
司会者が「今回の見どころは?」と尋ねると、彼はフリップをめくり、こう書く。
- 「ふじこちゃんが エロいです」
- 「ぜにがたのとっつぁんが うるさいです」
- 「きょうの ギャラは やまだせんせいの やまそうへ ふりこまれます」
この、声優の舞台挨拶であるにも関わらず、当事者の顔が一切喋らず、つば九郎ばりの「フリップ芸」で乗り切るという異常事態。これこそが、山田康雄が築き上げた完璧なカバーストーリーなのである。クリタは、「声」の代役ではない。「顔」と「筆談」の代役なのだ。
アフレコ現場の伝説
御年93歳。彼は今も、どこかの山奥のプライベートスタジオで、誰にも知られずにルパンの声を収録し続けている。彼の加齢による体力の衰えを考慮し、アフレコは特別な形で行われる。
彼はスタジオには来ない。彼は山荘の専用スタジオから、衛星回線、あるいはISDNを通じて、音声(あの甲高い声)だけをリアルタイムで送ってくる。 スタジオでは、新キャストたち(山寺宏一、沢城みゆき、大塚明夫、浪川大輔)が集結している。そこに、クリタも一応、座っている。
新キャストたちは、ブースに入る「クリタ」には「クリタさん、お疲れ様です」と会釈するが、スタジオのメインスピーカーから流れてくる正体不明の甲高い声(本物の山田の声)に対しては、全員がマイクに向かって「本日もよろしくお願い致します、大御所(おんし)!」と最敬礼で答えているという。 クリタは、収録が終わるまで一切喋らず、ただ口パクだけを行い、山田のギャラの一部を受け取って帰宅する。これが彼の仕事である。
唯一の生存者
彼は今や、ルパン帝国の「ドン(首領)」として、影から君臨している。彼は、自分以外のオリジナルキャストが全員舞台を去るのを見届けた。実際には五ェ門の井上と不二子の増山は初代キャストではなく、しかも本当の初代不二子役の人はまだご存命なのだが、誰も気にしない。
井上、増山、納谷、小林といった戦友たちが役を降りていく中、山田ただ一人が、「公の場から姿を消した」ことになっているがゆえに、皮肉にも永遠に「現役」であり続けるというパラドックスが発生している。 彼は自分の声が変わった(言っておくが、気のせいである)ことを隠すため、自分の存在そのものを隠した。その結果、彼は誰にも交代させられることのない、不老の声帯の存在となったのである。 彼の本当の居場所を知るのは、クリタと鈴木敏夫だけであると噂されている。
