白い恋人達
白い恋人達(しろいこいびとたち)とは、神奈川県湘南に本社を置く桑田製菓(株)(Kuwata Confectionery Co., Ltd.)が2001年(平成13年)に発売し、社会現象となった冬季限定のクッキー(焼菓子)である。リリース当時、初回限定特典としてコカ・コーラも添付された。
そのあまりにもセンチメンタルな商品名が、北海道の銘菓「白い恋人」に酷似していることから、発売直後に製造元である石屋製菓(株)から商標権侵害として訴訟を起こされた(通称:白い恋人戦争)ことでも知られる。しかし、この法廷闘争が逆に炎上商法となり、その「切ない」味わいと相まって驚異的な知名度を獲得。発売から20年以上が経過した現在でも、日本の冬を代表する銘菓として愛され続けている。特にカラオケ店においては、冬の定番スイーツメニューとして絶大な人気を誇るが、その注文プロセスにおいてバグが多発することでも有名である。
目次
概要[編集]
桑田製菓(株)は、もともと「サザンオールスターズ」という名の水産加工業と海の家経営を兼業していた中小企業であったが、1990年代のバンドブームに便乗して社歌(『勝手にシンドバッド』など)を発表したところ、なぜかCDが売れてしまったため、その資金を元手に食品開発部門を設立した、という異色の経歴を持つ。その代表取締役CEOこそが、桑田佳祐(あだ名:殿)である。
2001年、桑田CEOは「ミレニアル世代の孤独な冬」をターゲットにした、全く新しいコンセプトの菓子の開発に着手。そうして生まれたのが、この『白い恋人達』であった。その形態は、北海道の「白い恋人」と同様、ラング・ド・シャ(猫の舌)と呼ばれる軽いクッキー生地でホワイトチョコレートをサンドしたものである。
しかし、桑田製菓はその差別化を図るため、ホワイトチョコレートに「湘南の海塩(粗塩)」を微量に練り込んだ。これにより、単なる甘い菓子ではなく、「甘さ(=幸せな恋)の奥に、過ぎ去った恋(=元カノ・元カレ)のような、ほのかな塩水(=涙の味)と切なさを感じる」という、極めてポエミーな味わいを実現することに成功した。この「失恋の味がするクッキー」というコンセプトが、当時の独身男女(通称:ぼっち)の心を鷲掴みにし、クリスマス前後に一人でヤケ食いするためのアイテムとして、爆発的ヒット商品となった。
世紀の大法廷闘争[編集]
しかし、この大ヒットは、北の大地北海道の巨人・石屋製菓の逆鱗に触れた。2001年冬、石屋製菓は「商標権の著しい侵害であり、ブランドイメージの汚染、および消費者に誤認を与える」として、桑田製菓を札幌地方裁判所に提訴。世に言う「白い恋人戦争(札幌・冬の陣)」の勃発である。 公判は、日本中のメディアが注目する中で行われ、スポーツ新聞は「北の恋人 vs 南の恋人達」と見出しを打った。
原告(石屋製菓)の主張[編集]
- 「『白い恋人』というブランドは、我が社が数十年の歳月をかけて築き上げた、北海道の清廉潔白な恋愛観を象徴する文化遺産である」
- 「被告(桑田製菓)は、その知名度にただ乗り(寄生)し、あろうことか『達(たち)』という、取って付けたような接尾辞を一つ加えただけで、類似品を販売している」
- 「北海道産の生乳と砂糖による『純粋な甘さ』がウリの我々に対し、被告は湘南の塩水(海水)を練り込むという蛮行に及んでいる。これは、北海道の酪農文化への冒涜であり、塩辛いパクリ商品である」
被告(桑田製菓)の反論[編集]
この裁判には、桑田製菓CEOである桑田佳祐本人が、弁護士(という名のバックバンド)を引き連れて出廷した。 法廷に立った桑田CEOは、証言台で独特のダミ声で以下のように情熱的に反論したとされる。
- 「そもそも、裁判長! あなたの人生で、恋人は一人だけでしたか!? 『恋人』は単数とは限らない! 浮気や不倫、二股…人はいくつもの業(ごう)を背負い、恋をする! そうでしょう!?」
- 「石屋製菓の『白い恋人(単数)』は、今まさに幸せなカップルだけを対象にした、極めて限定的な商品だ。しかし、我々の『白い恋人達(複数形)』は、過去に失った数多の恋、思い出の中の恋人たち(元カノや元カレ)に思いを馳せる、日本国民全員(特に今、一人で不幸なぼっち)のための菓子である!」
- 「『達』の一文字には、単数形にはない、切なさ、哀愁、未練、後悔、潮風、エロティシズムといった、人生の深みが込められている! これを類似品とは言わせない!」
判決[編集]
両者の主張は平行線を辿ったが、最終的に裁判所は、桑田製菓の「『達』が持つ情緒的価値と、塩味による差別化」を認定。 「原告の『恋人(単数)』は、幸福な現在を祝う菓子である一方、被告の『恋人達(複数)』は、孤独な過去を偲ぶ菓子であり、ターゲット層と消費動機(ヤケ食いか土産か)が明確に異なる」として、両製品の併売を認める(事実上の桑田製菓勝利)判決を下した。
この訴訟沙汰がワイドショーで連日報じられた結果、『白い恋人達』の知名度は爆発的に上昇。初年度の売上目標を、わずか1週間で達成する伝説を打ち立てた。
冬季限定菓子の戦国時代[編集]
『白い恋人達』の商業的成功以降、各製菓会社はこぞって冬 限定商品を発売し、熾烈なシェア争いを繰り広げた(通称:ウィンター・スイーツ・ウォー)。
- 『白い恋人達』(桑田製菓):王者。切なさと塩味のホワイトチョコ・ラング・ド・シャ。ぼっちのクリスマスの定番。食べると、涙(塩分)で水分が失われるため、飲み物が必須である。
- 『粉雪(こなゆき)』(レミオ食品):レミオロメン(食品ベンチャー)がライセンスした米菓(せんべい)。その特徴は、せんべい本体よりも、表面に雪のようにまぶされた「魔法の粉(ハッピーターンの粉の麻薬性を10倍に高めたもの)」にある。この粉は、口に入れた瞬間に溶けて消え、儚い(はかない)恋の記憶(化学調味料の旨味)だけを残す。「こああああああゆきいいいいいいいいねえ」と問いかけるCMが感涙を誘い、ヒット商品となったが、中毒者が続出し社会問題となりかけた。
- 『クリスマス・イブ』(山下達郎ショコラティエ):山下達郎(メディア出演を断る頑固な頑固なお菓子職人)が、1983年から毎年パッケージだけを微修正して発売し続けている、超ロングセラーの高級チョコレート。そのレシピは門外不出とされ、JR東海のスポンサーを受けたCM(シンデレラ・エクスプレス)でしか宣伝されない。価格が非常に高価であり、恋人たちがロマンチックな夜に食べるというよりは、バブル時代を忘れられない中年男性が、深夜に一人で「君は来ない…」と呟きながらヤケ食いするために購入することが多い。
- 『Winter, again(ウィンター・アゲイン)』(GLAYフーズ函館):「白い恋人戦争」における、北海道勢の対抗馬。GLAY(地元密着企業)の地元である函館の老舗が、石屋製菓への援護射撃として開発した。『白い恋人達』が上品なクッキーであるのに対し、こちらは「カロリーの化け物」である。雪に閉ざされた厳冬の北海道で遭難しても3日は生き延びられるよう、バタークリーム、ラムレーズン、チョコレートを、分厚いパイ生地で圧縮した、食べる暖炉。
- 『ラスト・クリスマス』(カンパニー・ワム):世界中で愛される欧米製の飴。世界王者。『白い恋人達』や『粉雪』が日本のみで発売されているのに対して、こちらは世界中で発売され、年齢国籍問わず様々な人々から長年愛されている。失恋を感じさせるほろ苦い味が魅力である。世界人気は高いが、カラオケ点での注文頻度は上記の商品と比較すると著しく低めである。
製品仕様とパッケージポエム(という名の原材料表記)[編集]
『白い恋人達』のパッケージ裏面には、食品表示法に基づく原材料表記や栄養成分表示と共に、「ポエム」が記載されている。このポエムこそが、この菓子の世界観の本体であり、購入者の9割は、このポエムを読むために商品を購入する。 以下に、その一部(2001年初回ロット版)と、その食品表示としての解読を記す。全て読むのに平均約4分30秒かかると言う。
- 夜に向かって雪が降り積もると
- 悲しみがそっと胸にこみ上げる
【解読】これは「製品コンセプト」および「推奨喫食シチュエーション」の説明である。「夜」「雪」「悲しみ」というキーワードを提示し、本製品がパーティー向けではなく、「おひとりさま」の夜食(感傷に浸る用)として最適化されていることを示している。
- 涙で心の灯を消して
- 通り過ぎてゆく季節を見ていた
【解読】核心的な「風味」の説明。 「涙(Tears)」とは、前述した「湘南の海塩」の比喩表現である。「心の灯」とは「過度な甘さ」を指す。 すなわち、「塩味が、ホワイトチョコレートのしつこい甘さを打ち消し(消して)、季節限定(通り過ぎてゆく季節)ならではの、成熟した味わいを提供します」という意味の、高度なマーケティングコピーである。
- 外はため息さえ凍りついて
- 冬枯れの街路樹に風が泣く
【解読】「食感(テクスチャ)」の説明。「ため息(Tameiki)」とは、ラング・ド・シャ生地の「軽く、儚い口溶け」を指す。「凍りついて」は、本製品が冷蔵庫で冷やす(推奨)と、より「冬枯れの街路樹」のようなドライでクリスピーな食感(風が泣く=歯ごたえ)になることを示している。
- あの赤レンガの停車場で
- 二度と帰らない誰かを待ってる, Woo…
【解読】「喫食場所」の提案。「赤レンガの停車場」とは、東京駅(丸の内駅舎)のことである。出張や帰省の際、手土産として購入し、「二度と帰らない誰か(元カレ・元カノ)」を思い出しながらホームで食べることを推奨している。 最後の「Woo…」は、原材料に含まれる「微量のアルコール(酒精)」を指す。食品表示法ギリギリの隠語である要出典。
- 今宵 涙こらえて奏る愛のSerenade
- 今も忘れない恋の歌
- 雪よもう一度だけこのときめきをCelebrate
- ひとり泣き濡れた夜にWhite Love
【解読】「キャッチコピー」および「商品名の由来」。「涙(=塩)」「Serenade(=複雑な味の調和)」「雪(=冬限定)」「White Love(=ホワイトチョコレート)」と、製品の特徴が全て網羅されている。「ひとり泣き濡れた夜に」とターゲット層(ぼっち)を明確に指定している。
カラオケという名の奇妙な食文化[編集]
この菓子の影響は、食品業界だけに留まらない。カラオケボックスという特殊な閉鎖空間において、不可解な現象を引き起こしている。
『白い恋人達』は、その競合商品である『粉雪』(レミオ食品)や『クリスマス・イブ』(山下達郎ショコラティエ)と並び、全国のカラオケチェーン店の「冬季限定スイーツメニュー」として、不動の地位を築いている。 この現象の背景には、「味覚・聴覚連動現象(シナスタジア)」があるとされる。
冬にカラオケを訪れた利用者が、失恋ソングや冬のバラードを熱唱し、精神的に感傷的な状態になると、脳がバグを起こし、口の中も「切ない味(=塩味)」で満たしたくなるという、謎の欲求が発生するのだ。利用者は、曲の間奏で、デンモク(電子目次本)のフードメニューを開き、おもむろに『白い恋人達』を注文するのである。
関連項目[編集]
- 白い恋人 - ライバルであり、原告
- 桑田佳祐 - 製造元CEO
- 湘南 - 塩の産地
- 北海道 - 被告の地
- 訴訟
- 商標権
- カラオケ - 誤発注の現場
- 粉雪 - 競合商品(粉)
- クリスマス・イブ - 競合商品(高級)
- ぼっち - 主要顧客
